アメコミと日本の漫画の大きな違いをさぐる

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アメリカンコミック(アメコミ)と日本の漫画は、どちらも世界中で愛されるコミック文化でありながら、その制作方法、表現技法、ビジネスモデルに至るまで、根本的に異なる特徴を持っています。これらの違いを理解することで、それぞれの文化的背景や創作哲学の深さを知ることができます。

視覚的表現とアートスタイルの違い

最も目に見える違いの一つが、視覚的表現の手法です。日本の漫画は基本的に白と黒を基調としたモノクロ中心で描かれ、キャラクターの動きや臨場感を表現する際は、擬音や集中線、背景の描き込みなどのテクニックが使われます1。一方、アメコミはフルカラーで描かれることが多く、1コマごとにまるで写真のようにリアリティのある描写が特徴です1

日本の漫画では、キャラクターの表情や感情を強調するために、大きな目や顔の表現が豊かであることが特徴で、比較的シンプルな線画で構成されます7。これに対してアメコミでは、筋肉質なキャラクターが立体的な描写で描かれ、キャラクターの全身を描いたコマが多く見られます5

読み方についても明確な違いがあります。日本の漫画は右綴じで右上から左下に向かって読むのに対し、アメコミは左綴じで左上から右下に向かって読みます15

ストーリーテリングの根本的違い

ストーリー構成においても、両者は大きく異なるアプローチを取っています。日本の漫画は連載形式で展開され、長期間にわたってキャラクターの成長や心情の変化を丁寧に描写していきます7。一般的にストーリーの完結性が重視され、登場人物や物語が明確な終わりを迎えることが多く、物語の中心となるテーマやメッセージが緊密に絡み合って展開されます7

一方、アメコミのストーリーは単発のエピソードが連続して展開されることが多く、物語の完結性よりもキャラクターの魅力やアクションシーンが重視される傾向にあります7。また、クロスオーバーやリブートが頻繁に行われ、異なるキャラクターや物語が絡み合う複雑なストーリーラインが構築されることが特徴です7

ジャンルの多様性についても大きな違いがあります。日本の漫画には多様なジャンルが存在し、少年、少女、青年、女性向けなど、幅広い読者層にアピールしています7。アメコミには圧倒的にヒーローものが多いのが特徴で、主にスーパーヒーローを扱った作品が中心となっています5

制作体制と著作権の違い

制作面での違いも非常に重要な要素です。日本の漫画では、アシスタントがいるものの、ストーリー制作やキャラデザインを始めとした作品制作を作者一人で行うことが多いのに対し、アメコミでは一般的に5人程度のチームを組み、分業体制で作品を作成します5

最も根本的な違いの一つが著作権の所在です。日本の漫画では作品の著作権は漫画家が持っています4。出版社は原稿料や印税を支払うことで、漫画家が描いた作品を雑誌に載せたり単行本を出版しており、スピンオフを作ったり映像化したりするには、作家の了解が必要になります4

それに対して、アメコミでは出版社が著作権を持っています4。このことにより、アメコミの出版社は同じキャラクターの作品を、作家を変えつつ何十年にもわたって作り続けられたり、映画やキャラクターグッズなども自由に作ることができます4。スーパーマンやキャプテンアメリカなど、100年近くも世界中に愛されるヒーローが活躍しているのも、出版社が彼らのライセンスを持っているからです4

職業観と創作哲学の違い

「漫画家」という職業に対する意識にも大きな違いがあります。日本で漫画家になるといえば自分のオリジナルの作品を作るというのが普通ですが、アメリカでは漫画家になりたい=MarvelやDCコミックなどのキャラクターを手掛けたいと思うことが多いそうです5

これは著作権システムの違いと密接に関連しており、アメリカでは既存の世界観の中で何人もの作家がストーリーをつなげていくものが主流なのです5

出版形態と価格の違い

出版形態についても大きな違いがあります。アメリカンコミックは、「Comic Book」と呼ばれる30ページ前後の薄い小冊子が月刊で発行されます4。日本では「リーフ」と呼ばれるこの小冊子の単行本の値段が2000〜3000円とかなり高いのが特徴です6

日本では週刊誌を発売しており、安価な紙を使い、コストを抑えているのに対し、アメリカは高級な紙を用いカラー印刷しています3

心理的描写と人間性の表現

元講談社のアメリカ人漫画家ポール・ポープ氏は、「マンガには、もっと心理的に繊細なストーリーや人間的な要素がある」と指摘しています2。アメコミについては「よくガソリンスタンドなんかで手に入るようなペなペなの冊子で、文学性があるかと言われればそうでもない」としながらも、スーパーヒーローは大好きだと述べています2

世界的な評価の変化

近年、日本の漫画の世界的な評価は急激に高まっています。アメリカ国内の流通する書籍の約85%をカバーするNPD BookScanによると、2021年6月の大人向けコミックスランキングで、日本のマンガがトップ20をすべて占めたという驚くべき結果が出ています8

長年『バットマン』などを手掛けたコミックライターのチャック・ディクソン氏は、「日本のマンガには多くの献身、情熱、そして技術がありますが、マーベルコミックとDCコミックスにはほとんど見られません」と述べ、「マンガのイラストは魅力的で、変化に富んでおり、好きになる理由がたくさんあります」と評価しています8

同氏は「私の好きなマンガのジャンルの一つに『釣り』がありますが、吸血鬼や魔女、ゾンビが釣りをする話ではありません。普通の男性が船や海岸、川のほとりで釣りをする話です。ストーリーは魅力的で、美しく描かれています」と述べ、日常的なテーマでも魅力的な作品を作り上げる日本の漫画の技術力を高く評価しています8

まとめ

アメコミと日本の漫画の違いは、単なる表現技法の違いを超えて、それぞれの文化的背景、ビジネスモデル、創作哲学の違いを反映しています。アメコミは出版社主導の分業制によって長期的なキャラクター展開を可能にし、日本の漫画は作家個人の創作性を重視することで多様性豊かな作品群を生み出してきました。

どちらも独自の魅力と価値を持つ表現媒体であり、近年の日本の漫画の世界的な成功は、その心理的な繊細さと多様なテーマ性が世界中の読者に受け入れられていることを示しています。今後も両者がお互いから学び合いながら、さらなる発展を遂げていくことが期待されます。

引用:

  1. https://wiseinfinity.com/articles/american-comic-book/1073/
  2. https://heapsmag.com/new-york-creator-extreme-love-to-japanese-creator-through-book-shelf-paul-pope-meets-kazuo-umezu-dark-heroes
  3. https://kozu-osaka.jp/cms/wp-content/uploads/2018/03/5db33d58acec20d70e41a58b3e3d1565.pdf
  4. https://note.com/dragtiga_comic/n/n86ef05d6e74c
  5. https://contest.japias.jp/tqj24/240020R/manga2.html
  6. https://dd-career.com/blog/nishi-nippori_20220406/
  7. https://kabuki-creatives.com/manga/manga-amekomi-difference/
  8. https://finders.me/kqFQpDI5MzE/1
  9. https://hataraku.vivivit.com/design-knowledge/americancomics_japancomics/
  10. https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13233937768
  11. https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10141086715
  12. https://note.com/keizokuramoto/n/ne75caeda154a

 

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